Fleacia CPQで初期見積の即日提示を実現
見積プロセス改革で迅速な顧客対応を可能に


NGKフィルテックが取り扱う製薬業界向けの製薬用水製造設備は、極めて高 い品質が求められる。 技術者は顧客ごとの要望・課題を的確に把握し、細部にわたる要求にも対応した見積・積算を行うことが必要となる。だが、引合・受注案件数の増加により、積算業務の効率化が必要とされる状況であった。
そこで、初期見積対応を営業で完結できる仕組みを目指し、Fleacia CPQを導入。属人化していた設計ルールを統一し、1年で仕組みを立ち上げた。実運用開始から3カ月にて、営業は顧客への迅速な見積回答の効果を実感し、技術部門は見積・積算業務を大幅に削減した。今後は見積対象範囲をさらに拡大し、他の製品にも展開するなど継続的な改革に挑んでいる。
■NGKフィルテック株式会社
本社
神奈川県茅ヶ崎市
創業
1991年10月
資本金
5,000万円
売上高
72億円(2023年3月期)
主な事業内容
分離膜の総合エンジニアリングメーカー
セラミック膜・有機膜の特長を生かし、多種多様なニーズに対して最適な分離膜システムを設計・製造・販売
NGKフィルテックが提供する製薬用水設備

お客様に聞く
写真左から
・NGKフィルテック株式会社 取締役 技術2部 部長 山本茂氏
・NGKフィルテック株式会社 営業部 大阪営業所 所長 有田直樹氏
・日本ガイシ株式会社 エンバイロメント事業本部 営業統括部
産業プロセス営業部 管理グループ マネージャー 長家弘和 氏
・NGKフィルテック株式会社 営業部 東京営業所 所長代理 佐藤峻一氏
・NGKフィルテック株式会社 技術2部 医薬1課 課長代理 古川唯一氏
(取材当日はオンラインにてご参加)

目次
日本ガイシグループの分離膜総合エンジニアリングメーカー
NGKフィルテックは、日本ガイシグループの分離膜システムの総合エンジニアリングメーカーである。セラミック膜と有機膜それぞれの特長を生かした分離膜システムを取り扱い、省エネ性や省スペース性、大型化への対応、メンテナンス性の向上など、顧客の声を迅速に反映し、ニーズに寄り添った製品提供を心がけている。
同社の分離膜システムは製薬向けをはじめ、食品、電子部品などさまざまな分野で採用されている。とりわけ製薬用水設備は、国内で高い評価を得ており、大手製薬会社をはじめ多くの医薬品メーカー等に、医薬品や医療機器の製造に欠かせない高純度の水を提供している。
顧客要望に対する細やかな対応・提案が技術者の業務負荷を増大
製薬業界において、用水設備は「品質の根幹を支える設備」として非常に重要であり、顧客のこだわりが強く反映される領域である。そのため、汎用的なパッケージ仕様では応えきれないニーズが多く、技術者は顧客要求を詳細に把握し、それを見積もりや設計に反映させなければならない。NGKフィルテックの強みは、こうしたさまざまな個別要求に対し、柔軟なカスタマイズで対応できる点にある。しかし、顧客と密に連携して要求を詰めていく過程で、技術者の作業負荷は増大する。
「技術者はお客様に徹底して寄り添い、要求が固まっていない段階から、ともに仕様を詰めていきます。引き合いの初期段階から技術者が関わり、小さな案件でも数日、大きな装置では各部門との調整も含めて数週間を要します。実務が立て込む時期には案件をこなしきれず、機会損失となっていることが課題でした」と同社取締役 技術2部 部長山本氏は語る。
さらに、仕様の複雑性から商談初期の概算であっても営業で積算業務は行わず、引き合いが来るとすべて技術に依頼していた。中には確度の低い案件や仕様が固まっていない案件もあり、技術リソースを圧迫する要因もあった。
山本氏

近年は案件数の増加により、技術者の負担はさらに大きくなり、業界全体で深刻化する人手不足の問題は同社でも例外ではない。こうした状況において機会損失を防ぎ、売上拡大を実現するためには、見積・積算業務の効率化は最も重要な課題のひとつであった。
Fleacia CPQの効果を事前検証で確認
日本ガイシグループではグループ全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されている。特にDXによる業務の見直しは重要課題のひとつであり、日本ガイシ産業プロセス事業部でも関連事業でDXを推進している。同事業部が従来から取引のあるフューチャーアーティザンから「Fleacia CPQ」の紹介を受けたのが2023年の4月であった。Fleacia CPQは、製造業向けの製品やサービスの仕様確定・見積作成を支援するツールである。製品構成が複雑で見積に専門的な技術計算を要する個別受注型の産業機械にも対応する。同事業部が扱う製品は、NGKフィルテックの製品をはじめ、設備・装置など機器構成の提案や見積にエンジニアリング要素を伴うものが多い。Fleacia CPQ導入をDX推進のテーマとして進められないかと考えた。
NGKフィルテックは、長年の課題だった見積・積算業務の改革の必要性をあらためて認識した。一方で、同社の設備は仕様パターンが多岐にわたり、見積・積算には複雑な技術計算を要するため、市販のCPQツールで対応できるのかという懸念も拭い切れなかった。判断を躊躇していたところ、フューチャーアーティザンからPoC(Proof of Concept:本格導入前の実現可能性検証)の提案があった。Fleacia CPQはSaaSとして提供されているため、正式版と同一環境で検証ができるという。
NGKフィルテックの装置は客先の要望に応じて、精製水からUF水(限外ろ過膜(UF膜)を用いて精製された水)、注射用水やピュアスチームなどを製造・供給する装置を組み合わせ、一つの設備として構成する。PoCの時点ではターゲットは先ずは精製水製造・供給装置で行い、効果が出ればUF水や注射用水等の後段の装置も拡充していくことが決まった。

製薬用水設備の装置群
PoCはフューチャーアーティザンの支援を受けながら約2カ月間実施した。結果、製薬用水設備の中核であるRO+EDIシステム(逆浸透膜(RO)による、ろ過と電気脱イオン化(EDI)を組み合わせた水処理システム)における難易度の高い積算がFleacia CPQで対応可能であることを確認した。RO+EDIシステムで対応できるなら他の装置・工程でも問題ないと判断し、PoCに関与したプロジェクトメンバーはFleacia CPQの有効性を感じた。
「価格」が決め手となり導入を決定
導入判断に関してはFleacia CPQだけでなく他社製CPQも調査し、最終的にはFleacia CPQを含む3社で比較検討を行った。「当社が実現したいことを考えると、必要な機能がFleaciaには揃っていましたし、PoCで評価もしていました。なんといっても最大の決め手は価格です」と長家氏は語る。
一般にCPQの構築には、アプリケーションのライセンス費用に加え、固有要件を反映したカスタマイズを前提とするため、数千万円から億円規模の費用がかかる。一方、Fleacia CPQはSaaS型で提供されるため、開発分の初期費用は不要である。また、月額のサービス料金も抑えられており中堅・中小規模の企業でも導入しやすい。

長家氏
価格に加えて、機能面でもNGKフィルテックの主流製品である精製水装置の積算・見積に対して、Fleacia CPQの機能は充分であることはPoCで確認済みであった。高価な他社のCPQの方が機能は充実しているかもしれないが、同社にとっては過剰な機能であり投資対効果の面で適さない。
さらに、ルール定義を行う技術者の視点では、エクセル形式の定義書でルールを作成できるため、自社で運用が可能であることも好意的に受け止められた。他社のCPQはエクセル定義ではなく、画面上で定義する。「画面からの定義だと複雑な技術計算などには対応できません。エクセル形式は仕様同士のつながりや関連が分かりやすく、自由に定義できるため拡張性があります」と古川氏が評価する。
「Fleacia CPQの機能面だけでなく、PoCにおけるフューチャーアーティザンのサポート力も高く評価しました。人手不足で導入に割けるリソースが限られるなか、導入支援で手厚いサポートが見込めたことも採用の決め手となりました」と佐藤氏が加えた。
Fleacia CPQは、価格、機能の充足、ルール定義の自社運用、サポート力といった点で評価され、最終的に採用が決まった。

佐藤氏
プロジェクト始動―初期見積を営業で完結できるシステムを目指す
Fleacia CPQの導入プロジェクトは2025年2月に本格始動した。体制はNGKフィルテックからプロジェクト責任者の取締役 技術部長 山本茂氏を筆頭に、技術担当の古川唯一氏、営業担当として東京営業所の佐藤峻一氏が主要メンバーとして参画。さらに親会社の日本ガイシから、産業プロセス営業部 管理グループのマネージャーである長家弘和氏が産業プロセス事業部の製品全体を俯瞰する視点でNGKフィルテックの支援を行った。
日本ガイシはグループ全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しており、本プロジェクトは長家氏の所属する産業プロセス事業部のテーマの一つとして進めている。日本ガイシとしてはまず、製薬用水設備の見積・積算業務にFleacia CPQを導入し、そこで成果が得られればエンジニアリング要素の強い装置を扱うグループ各社へも横展開していく想定をしていた。
NGKフィルテックが目指したFleacia CPQのコンセプトは、技術計算に明るくない営業でも、理解しやすい入力項目だけで概算見積を作成できるというものだった。製造量、タンク容量など、営業が顧客から入手しやすい情報を入力すれば、システム構成の選定が自動で行われるように仕様選定ルールを設計した。

属人化した設計根拠と技術計算の可視化に成功
精製水製造装置はNGKフィルテックの装置群の中で必ず含まれる中核製品である。その構成部品は他の装置でも共通に使用されるため、選定や仕様を作り込んでおけば横展開できる。このため、選定ルールは可能な限り自動化し、部品データは再利用可能にすることを意識した。
しかし、問題となったのは、技術者がそれぞれ個別に積算値や金額テーブルを持っていたことだった。同一の設計仕様でも技術者によって見積金額に微妙な差が生じており、Fleacia CPQ導入に際し、個人に依存していた設計根拠や技術計算を整理することを第一の目的とした。
ルールの整備は、フューチャーアーティザンの伴走も得ながら、2025年2月から6月までの約5カ月で完成した。一般的なFleacia CPQルールの整備期間と比べても短期間で実現している。要因としては、「初期見積を営業で完結する」という目的を明確にしたこと、ターゲット装置をベースとして展開しやすい精製水装置に絞って進めたこと、ルール定義を担当する山本氏や古川氏がルールの標準化に向けて意欲的に取り組んだことなどが挙げられる。
CPQ導入をきっかけにNGKフィルテックでは、技術部長の山本氏をはじめとするベテラン技術者の知識・ノウハウを可視化し、設計パターンや設計標準として統一できたことも大きな成果となった。精製水装置は、UF水装置や注射用水装置に比べて積算・見積の難易度は高くないが、設計パターンは最も多い。精製水装置でうまく進められれば次の展開ではそれほど労力を要しないとの見込みでスタートし、プロジェクトスタートから約1年で立ち上げることができた。現在は、選定時の不具合報告を受けて適宜修正しつつ、さらなる改善を検討しながら進めている。これが軌道に乗れば、CPQで対応できる見積範囲をさらに広げられる見込みだ。
ルール整備の中心メンバーである古川氏は次のように語った。「選定ルールの整備は手間のかかる大変な作業ですが、一度作り上げれば拡張時に再利用できるため、手間をかける価値があります。さらに、その作業を自分たちで行えるという自由度の高さも、Fleacia CPQの利点だと考えています」
見積回答を2週間から即日に短縮
現在、営業メンバーがFleacia CPQを使い始めてから約3カ月になる。最大の効果は顧客への見積回答を迅速に行えるようになったことだ。これまでは引き合いが来ると技術部門に任せ、営業は回答を待つ状態だった。技術部門は真摯に対応してくれるが、業務が重なると対応が難しくなることもある。約束した期限どおりに回答できるかどうか、常に精神的な負担はあった。
Fleacia CPQを導入したことで、営業単独でわずか15~20分での見積作成ができるようになった。これまでは顧客に「2週間後に回答します」と伝えていたところを「すぐにお出しします」と言える。「初期段階で顧客の仕様が固まっておらず、大まかな要件しかない場合でも、技術部門を介さず に営業単独で見積を提示できます。特に、スピードを重視する案件では大きなメリットになります。よくお客様から、至急の案件として相談されることがあります。そのときに瞬時に見積を出せることは、お客様も営業も技術も、互いに喜びでしかありません」稼働後の運用定着推進や見積業務の実施者である有田氏は、Fleacia CPQ導入の効果を口にする。

有田氏
引き合いがすべて受注につながるわけではない。 中には「とりあえず見積だけほしい」といった、案件として固まっていないものも多い。今は営業が単独で見積を作成し、受注可能性の高い案件や必ず受注したい案件を選別して技術に依頼することができるため技術部門の負荷も大幅に軽減した。

若手営業の提案力強化にも寄与
Fleacia CPQはUIがわかりやすく、マニュアルなしでも直感的に操作できる。
「営業のミーティングで20分ほどFleacia CPQの説明をしたところ、その場で全員が使い方を習得しました。当初は勉強会の開催を予定していたのですが、必要ありませんでした」と有田氏は言う。新システムを導入すると使いづらさや社内浸透に苦労することも多い。Fleacia CPQがベテラン、若手営業問わず、スムーズに新システムとして受け入れられたエピソードである。
「Fleacia CPQを活用すれば、画面を開きながら商談ができ、究極的には誰もがその場で見積を提示することも可能です。若手営業の提案力強化にも大きな効果があると感じています」と営業担当の佐藤氏が語った。
これまで経験の浅い若手には難しかった見積作成も、Fleacia CPQの画面に表示された項目に沿って顧客に仕様確認ができる。Fleacia CPQを活用し、顧客にスピード感をもって精度の高い見積提示を実現したのである。
さらなる改革へ
NGKフィルテックとしては、医薬用水装置に加え、セラミック膜装置をもう一つの柱と位置づけており、今後はセラミック膜装置にも展開したいと考えている。
セラミックフィルターを用いる研磨排水処理システムは、複雑な配管構造に加え、フィルター、タンク、ポンプなどの汎用部品を組み合わせる構成で、基本的な考え方は医薬用水装置と同じである。精製水装置の対象は水だが、セラミックフィルター装置は顧客の工場のプロセス液を対象とするため、技術計算で考慮すべき要素は異なる。ただし、使用する機器構成は類似しているため、設計パターンを定義すれば応用可能だと想定している。

研磨排水処理システム
グループでDXを推進している日本ガイシの視点では、いわゆる「守りのDX」である業務効率化を進める一方で「攻めのDX」として装置にデジタル機能を組み込み、付加価値を高めて提供する取り組みも行っている。今回のような業務効率化のDXで業務負荷を減らし、そこで生まれたリソースを用いて、「デジタルの武器」となる機能の開発を進めていく方針だ。
また、産業プロセス事業部としては、NGKフィルテックに続く事業部内の製品ラインナップとして、加熱装置、グラスライニングなどへの展開を検討している。

加熱装置(加熱炉)

グラスライニング製品
「NGKフィルテックの今回の取り組みはDXの活性化に大いに貢献しています。他事業でもこの取り組みを契機に業務改革に向けたデジタル化が浸透していってほしいと思っています。あわせて、社内の啓発やDX人材の育成・拡充にもつながることを期待しています」
最後に日本ガイシの長家氏は笑顔で締めくくった。