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ECM(エンジニアリングチェーンマネジメント)とは?個別受注型製造業で直面する限界と、DCMという新しい考え方

  • 11 時間前
  • 読了時間: 13分

製造業において、設計変更への対応、BOMの不整合、部門間での情報断絶といった「設計情報をいかに正確につなぐか」という問題は、多くの企業が抱える悩みでもあります 。 


こうした背景から注目を集めているのが、ECM(Engineering Chain Management:エンジニアリングチェーンマネジメント)という概念です。 

本記事では、ECMの基本概念を起点に、SCM・PLM・BOM管理との関係性を整理します。


そのうえで、個別受注型製造業においてECMだけでは対応しきれない限界と、その突破口となるDCM(Design Chain Manegement:デザインチェーンマネジメント)という考え方やCPQという解決策についてわかりやすく解説します。




目次


ECM(エンジニアリングチェーンマネジメント)とは何か


ECMとは


ECMとは、Engineering Chain Managementの略で、日本語ではエンジニアリングチェーンマネジメントと呼ばれます。


ECMは、製品の設計・開発から製造準備、生産、保守に至るまで、技術情報の流れを一貫して管理・最適化するための考え方です。対象となる情報には、図面、仕様書、3D CADデータ、EBOM、MBOM、技術変更情報、製造指示情報、保守情報などがあります。


製造業では、研究開発や商品企画で立案された製品コンセプトをもとに、設計部門が具体的な図面や部品表(EBOM)を作成します。この設計情報が、後工程である調達・生産技術・製造へと流れていく出発点となります。



設計情報は各部門で「情報の単位」や「付加情報」が変わる


ただし、設計部門が作成する情報はあくまで設計視点、すなわち製品の機能やユニット単位で整理されたものです。


設計情報は後工程に流れるにつれて、各部門の業務に合わせて情報の単位や切り口が変化し、さらに必要な情報が付け加えられていきます


  • 調達部門では、設計上の部品情報が「調達単位」に変換され、サプライヤー情報や発注条件といった調達固有の情報が付加されます。


  • 製造部門では、同じ設計情報が「生産ラインにおける製造単位」に組み替えられ、製造工程や作業手順といった情報が加わります。


このように、設計情報は部門を渡るごとに単位や付加情報が変わるため、各部門が独自に管理・変換する体制では非効率なうえ、設計変更時に影響箇所の特定が困難になります。

結果として、情報の不整合や二重管理、手戻りといった問題が生じやすくなるのです。 


設計情報をいかに正確かつスムーズに下流へつないでいくかが、エンジニアリングチェーン全体を最適化するうえでの核心的な課題です。



SCM(サプライチェーンマネジメント)との違い


SCM(Supply Chain Management:サプライチェーンマネジメント)と比較すると、ECMとの違いがより明確になります。


SCMとは、部品や材料の調達から始まり、生産・物流・在庫管理・納品に至るまでの「モノの流れ」全体を最適化する考え方です。


サプライヤーから顧客に至るまでのプロセスをひとつのチェーンとして捉え、コスト削減・納期短縮・在庫の適正化を実現することを目的としています。


一方、ECMは、設計・開発から製造・保守へとつながる設計情報や技術情報など「情報の流れ」を最適化する考え方です。


サプライチェーンマネジメントとエンジニアリングチェーンマネジメント
サプライチェーンマネジメントとエンジニアリングチェーンマネジメント

これまで製造業のIT投資は、ERPの導入を中心に、SCMの最適化へと多くの関心が注がれてきました。生産計画の精度向上や在庫の適正化、調達コストの削減といった領域で、大きな成果を上げてきたことも事実です。


しかし、製造業において、コストや品質の約80%は、設計段階までに決定されると言われています。言い換えれば、SCMがどれだけ高度化されても、設計情報に問題があれば、そのムダやリスクは下流に引き継がれるだけです。


だからこそ、ECMが重要視されるのです。

設計情報を正確に整備し、各部門へスムーズにつなぐことは、コスト競争力の強化・品質トラブルの未然防止・開発リードタイムの短縮に直結します。SCMの最適化と並行して、その上流にあるエンジニアリングチェーンを強化することも製造業において不可欠な取り組みなのです。



ECMで解決できる課題


ECMは、製品の企画・設計段階で生まれた情報を、調達・生産技術・製造といった後工程へ、齟齬なく流し続けるためのマネジメントの考え方です。 


具体的には、以下のような課題に有効です。


  1. 影響範囲が不明確な設計変更が招く、コストと納期のリスク 

    設計変更の影響範囲が明確でないまま情報が伝わると、調達・製造部門では無駄な手配や手戻りが発生し、コスト・納期の両面で大きなダメージを招きます。 


  2. BOM(部品表)の不整合

    設計BOM(EBOM)から製造BOM(MBOM)への変換が手作業に依存している場合が多く、多大な工数がかかるだけでなく、ミスや情報の不整合が生じやすくなります。 


  3. 部門間の情報断絶

    設計・調達・生産技術・製造の各部門が、それぞれ独自のシステムやファイルで情報を管理しているため、情報の鮮度や正確性にばらつきが生じます。部門をまたいだ連携が属人化しやすく、担当者が変わると情報が途切れるリスクもあります。


  4. 製造での手戻りコストの発生

    製造性を考慮しない設計や、製造現場からのフィードバックが上流に届きにくい構造により、「実際には作れない」という問題が下流で発覚しがちです。後工程での発覚ほど手戻りコストは大きくなるため、上流と下流の双方向な情報連携が不可欠です。 


こうした情報のズレは、手戻り、品質不具合、納期遅延、余剰在庫、現場対応の増加につながります。


ECMは、設計情報を後工程へ確実に引き継ぎ、変更履歴や情報の整合性を維持することで、こうした問題を未然に防ぐうえで欠かせない考え方なのです。



ECM領域のソリューション


ECM実現手段として、PLM、PDM、3D CAD、BOM管理、MESなどのソリューションが活用されます。


ECM領域における各ソリューションは、設計情報の「生成から活用まで」の流れに沿って、それぞれ異なる役割を担っています。


起点となるのが3D CADです。製品の形状・構造・寸法といった設計情報を生み出す源泉であり、下流のすべてのシステムに流れるデータの出発点となります。


その設計データを正確に管理・統制するのがPDMです。図面やモデルの版管理・アクセス管理を通じて、設計データの信頼性を担保します。


PLMECMプラットフォームの中核です。企画から保守に至るまで製品情報を一元管理し、設計変更の承認フローや進捗管理も含めた部門横断の情報連携基盤として機能します。


PLMとERPの間に位置するのがBOM管理です。設計部門のE-BOMを製造部門のM-BOMへ変換、整合させる役割を担い、ECM全体の情報精度を左右する要となります。


最下流に位置するMESは、PLMやBOM管理から渡された製造情報を現場レベルの生産指示や品質管理へ落とし込み、設計情報を実際のモノづくりに結びつけます。


ECMで重要となる「設計情報をどう連続させるか」は核心となるテーマであり、各ツールがシームレスに連携できるかどうかが、ECM改革の成否を左右するといえるでしょう。





個別受注型製造業でECMだけでは限界が出る理由




個別受注型製造業でECMの取り組みがうまくいかない原因


ECM改革の手段としてPLMやBOM管理システムが活用されますが、個別受注型製造業では、PLMを導入するだけでは課題は解決されるわけではありません。


最大の理由は、顧客ごとに異なる膨大な仕様バリエーションを、PLM上のマスターとして事前に準備できないことにあります。


量産品であれば、想定されるバリエーションをマスターBOMとして定義し、製品仕様に応じて自動で構成を選び出す考え方が成立します。


しかし個別受注型製造業では、顧客固有の特注仕様が発生するうえ、一見標準に見える仕様も、寸法・性能・使用環境・設置条件・地域規格・周辺設備との取り合いによって細かな仕様差異が生じます。


こうした個別要求をすべてPLM上にマスター登録しようとすると、派生品番や類似BOMが際限なく増え続け、膨大なデータを管理しきれなくなります

本来、設計情報を後工程へつなぐ基盤であるはずのPLMが、単都度なる設計成果物の入れ物に成り下がってしまいます。


ここで重要となるのは、「何をマスターとして定義し、何をトランザクションとして扱うか」を明確に切り分けることです。


また、単にすべてをデジタルに置き換えることを目指すのではなく、「どこまでをデジタル化してシステムで制御し、どこに人の判断を介在させるか」という、テータデザインも極めて重要です。


この構造的な設計なしに「PLMにどうデータを入れるか」という議論から入ると、改革は失敗に終わります。



ECMの取り組みがうまくいかない原因は「ツール」ではなく「設計情報の入口」にある


個別受注型製造業におけるこうした問題の本質は、顧客要求を起点とする設計情報の流れにおいて、「設計情報の入口」が整理されていない点にあります。


ここでいう「設計情報の流れ」とは、以下のプロセスを指します。


顧客要求 → 仕様 → 構成 → E-BOM → M-BOM → BOP/工程


ECMが主に対象とするのは「構成」以降、すなわち詳細設計で確定した技術情報を製造・調達・保守へ正確につなぐ領域です。


しかし、その前段階である「顧客要求をどの仕様に変換するか」「その仕様からどの構成を生成するか」が整理されていなければ、後工程になるほどしわ寄せが蓄積し、現場の負荷は増大します。


設計結果としての図面やBOMを管理するだけでは、この問題は解決されません。


PLMに情報を登録する前の段階で、顧客から直接得た顧客要求を仕様へ変換し、仕様から構成を生成する入口部分を整えることが不可欠です。


個別受注型製造業においてECM改革を実務で機能させるには、PLMやBOM管理システムの導入以前に、この入口をどう設計するかが問われます。





そこで必要になるDCM(デザインチェーンマネジメント)という考え方



DCMとは


ECMは、詳細設計以降で確定した技術情報をBOM・図面・技術変更情報として管理し、製造・保守まで正しくつなぐ下流領域を担います。


一方で、顧客や市場ニーズを起点に、企画・構想設計の段階で製品仕様を決め、詳細設計につなげる流れにおいて、DCM(Design Chain Management:デザインチェーンマネジメント)という考え方があります。


つまり両者は、同じ設計情報の流れの中で対象領域が異なります。DCMが「何をどの仕様・構成で作るか」を決める上流を担い、ECMが「決まった設計情報を正しく管理・伝達する」下流を担う、という関係です。


デザインチェーンマネジメントとエンジニアリングチェーンマネジメント
デザインチェーンマネジメントとエンジニアリングチェーンマネジメント

上図は、量産型製造業のDCMとECMの一般的な関係を示しています。

個別受注型製造業においても、顧客・市場のニーズを仕様に落とし込みECMへ連携するというDCMの基本的な役割に変わりはありません。


ただし個別受注型製造業では、DCM段階において大きく三つの役割が求められる点で、その重要性はより一層高まります。


第一に、顧客の要求を正確に把握し、製品仕様へと的確に落とし込むことです。


第二に、特注仕様の受け入れを適切にコントロールすることです。

個別要求をすべて特注として処理するのではなく、標準仕様で対応できるものは積極的に標準品へ誘導し、真に個別対応が必要なケースに絞って特注として扱います。

このコントロールを徹底することで、品質の安定と後工程の負荷軽減を同時に図ることができます。


第三に、現場で得られる顧客ニーズを捉え、売れる製品の開発へとフィードバックすることです。

顧客との接点が多い領域だからこそ、市場の声をリアルタイムで拾い上げ、製品開発に活かす役割を担うことができます。


このように、顧客に最も近い場所で顧客ニーズや要求をリアルタイムに捉え、それを製品仕様へと反映させていくDCMは、個別受注型製造業において製品競争力の源泉となる戦略的な機能を担っています。



DCMを実現するには、設計ルール化が必要


個別受注型製造業では、顧客ごとに異なる要求を素早く製品仕様に転換し、顧客に仕様と見積を回答しなければなりません。


DCM領域で必要なことは、顧客要求がどの製品仕様になるのか、どの構成に落とし込むかを整理することです。


このとき重要になるのが、設計ルール化です。


顧客要求を製品仕様へ変換し、仕様条件に応じて構成を生成し、PDM/PLMへどの粒度で情報を渡すかを整理することを指します。


たとえば、DCMで扱う対象には、以下のような領域があります。


  • どこまで標準のマスター情報として持ち、どこから案件ごとのトランザクション情報として扱うか

  • 顧客要求をどの製品仕様に対応づけるか

  • 仕様条件に応じてどのユニット構成を生成するか

  • 標準仕様と個別対応をどこで切り分けるか

  • 生成した仕様・構成情報をEDM/PLMへどう連携するか


これらはDCMの概念を前提として初めて整理できるものです。


いくら高機能なPLMを導入したとしても、DCMの考え方に基づいたデータ設計と仕組みが整っていなければ、PLMの導入効果を得ることはできません。


DCMの役割は、顧客要求を製品仕様・構成へと変換し、後続のEDM/PLMへ渡す設計情報の入口を整えることです。


この入口が整理されることで、ECMが対象とする詳細設計以降の技術情報も安定し、設計情報の流れ全体がはじめて機能します。 



DCMの実装手段としてCPQが有効


DCMの考え方を実務に落とし込む手段として有効なのが、CPQです。


CPQとは、Configure, Price, Quoteの略で、顧客要求に応じて製品仕様を選定し、価格や見積を作成するための仕組みです。


一般的には営業見積ツールとして捉えられがちですが、個別受注型製造業においては、CPQは単なる見積ツールにとどまりません。


個別受注型製造業では、顧客ごとに要求や条件が異なります。

それらをそのままPLMに登録しようとすると、仕様や構成のバリエーションが膨大になり、マスター管理が破綻しやすくなります。


そこで重要になるのが、PLMに設計情報を連携する前段階で、顧客要求を製品仕様や構成へ変換し、バリエーションをコントロールすることです。


CPQは、このDCM領域を実務に落とし込む手段として有効です。顧客要求をもとに、以下のような役割を担います。


  • 顧客要求を製品仕様へ変換する

  • 選択可能な仕様やオプションを制御する

  • 組み合わせ不可の条件を判定する

  • 標準仕様・オプション・個別対応を切り分ける

  • 仕様条件に応じて製品構成を生成する

  • 生成した仕様・構成情報をEDM/PLMへ連携する起点をつくる


つまりCPQは、顧客要求から製品仕様・構成を生成し、後続のEDM/PLMで扱う設計情報の入口を整えるための実装手段なのです。


DCMが担うのは、顧客要求から製品仕様・構成を生成し、ECMへ渡す設計情報を管理することです。そのDCMを実務上のプロセスとして機能させるうえで、CPQは有効なツールとなります。





DCMを実務に落とし込むFleaciaCPQ




FleaciaCPQは、個別受注型製造業に特化したCPQソリューションです。


顧客要求に応じた仕様選定、構成生成、見積作成を支援し、営業・設計間で発生しやすい仕様確認や見積作成の手戻りを削減します。


特に、複雑な製品仕様や条件分岐をルール化し、誰でも正確な仕様選定を行えるコンフィギュレータ機能を備えている点が特徴です。


これにより、顧客要求をそのまま個別設計として扱うのではなく、標準仕様・オプション・個別対応を切り分けながら、製品仕様や構成を生成できます。


また、CRMに登録された顧客情報や案件情報と連携し、商談情報をもとに仕様選定や見積作成を行うこともできます。同じ情報を何度も入力する手間を減らし、入力ミスや転記漏れを防ぎながら、営業活動から見積作成までの流れを効率化できます。


FleaciaCPQは、単なる見積作成ツールではありません。

顧客要求から製品仕様・構成を生成し、後続のPDM/PLMへ渡す設計情報の入口を整えることで、DCMの考え方を実務に落とし込むための有効な手段となります。




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